ロルフ・ムーヴメントのワークショップについて


 
 ロルフィングは、重力と調和した身体になるために、筋膜に直接触れ、柔軟性を取り戻していく手技の部分と、習慣を見直し、より良い動きを発見していく運動的な部分があり、これらの2つの要素を組み合わせて行われます。ロルフ・ムーヴメントは、後者の運動的な内容に焦点を合わせたものです。

 私達の身体(姿勢)は、日常の習慣から大きな影響を受けています。自分には普通だと感じられることに対して、”本当にこれが普通なのか?”と問いかけることがスタートになります。自分の動き方や感じ方が、気付かないうちにあるパターンになっており、その繰り返しが今の身体の状態(姿勢)を作り出しているため、習慣から離れることは違う身体につながるのです。

 ロルフ・ムーヴメントでは身体を感じる、気付きを高めることを大切にするため、大きな動きのある運動よりも、ゆっくりとした小さな動きをします。動かそうと頑張らない動きに慣れていくことで、効率のよい動きに近付くことができるでしょう。

 また、身体のしくみを理解することは、姿勢や動きの改善に役立ちます。解剖学的な説明を加えながら、本来のしくみにかなった動きに近付けるように考えていきます。

 ロルフ・ムーヴメントは個人セッションでもさせて頂いてますが、グループでのワークショップも開催させて頂いてます。ご希望の方はメール・電話でお知らせ下さい。ご相談の上、開催場所・内容・回数などを決めて頂きたいと思います。ご連絡お待ちしています。

 
 
      (以下は5回シリーズで行っているワークショップの説明文と内容例です。)


 ロルフィングとは、アメリカの生化学者アイダ・ロルフ博士によって始められたもので、人が心身ともに調和のとれた健康な状態になることを目指す、からだの再教育プログラムです。ロルフィング身体統合法(Structural Integration)と呼ばれ、心身の健康に必要な“人が全体性を取り戻し、重力に対して調和すること”をテーマに進められます。

 そのために、①筋膜(筋肉・内臓・骨などを包み、つなぎ、身体全体に広がる膜組織のネットワーク)に手技で働きかけ、柔軟性や連続性(全体性)を取り戻すこと ②動き方や感じ方の習慣(知覚パターン)を見直し、身体のしくみに沿った動きを手にすること の2つを組み合わせながら、本来の機能が現れる手助けをします。

 身体が持つ自己調整力が上がる結果として、楽に動ける・姿勢が変わる・身体感覚が増す・痛みが改善する、といったことが起きるため、心身の不調を抱える人から、姿勢・慢性痛に悩む人、自分の可能性を広げたい人、パフォーマンス能力を上げたい運動選手まで、さまざまな人が対象になります。

 生きている身体は、外部の環境に対して思考よりも早く反応し続けています。呼吸、消化などと同様に、立つ、歩くといった動作もまた、理性的なレベルだけで考え、命令することではコントロールできない仕組みになっています。身体を動かす、のではなく、身体が動くのです。身体に元々備わっている自然な力(反応)の存在を感じ、信頼することが変化への第一歩になります。

 身体の自然な反応にブレーキをかけている習慣に気付くこと、良い状態につながるイメージや感覚を自分の身体に投げかけることで、身体に変化が生まれます。自分に対して、いかに問いかけられるかがポイントになります。ほんの少しでも変化が起きたなら、より良い方向に進む可能性が大きく広がります。ロルフィングが、新たな自分の可能性を感じ、持っている能力を十分に発揮するきっかけになることを願っています。

                      ワークショップの内容

 通常、ロルフィングは個人セッション(10回シリーズ)で行われますが、このワークショップはグループで、以下の点を考えながら進めます。

・ 身体を感じることに慣れ、気付きを高める
・ 身体の各部分をつなげ、ひとまとまりのものとして感じる
・ 感覚器官のはたらきと身体のつながりに気付く
・ イメージすること(意識すること、解剖的な知識を持つことなども含む)で身体が実際に変化することを感じる
・ 小さな動作(運動)で、身体の動きを観察する
・ 触れる側の意識(触れ方)にも目を向ける
・ これらのコツを掴み、日常生活に生かしてもらう


 一般的な筋トレのような運動や、正しい動き方の練習ではありませんが、感覚・知覚パターンに変化を促すことで、脳(神経システム)や身体のさまざまな部分が反応し、結果として動きや姿勢に変化が生まれます。プログラム・設定を変えていくような作業と言えるでしょう。これが継続する変化を可能にしてくれるのです。

 それぞれの方が、自分の状態に合わせて、必要なことに気付き、何かを手にしていかれることでしょう。身体に目を向け、感じ、観察する時間をとって頂くことだけでも大きな一歩になります。

 各回で主に扱う範囲は下記の通りです。どの部分についても、自由度・適応性・柔軟性を高めることを考えますが、その変化が他の部分(全体)にどう影響するのかという、身体を全体として捉える視点を持つことが大切になります。ある部分が本来の働きをすることで他の部分・全体の機能も良くなるし、また逆もそうだと言えます。

① 胸郭(肩)・横隔膜
② 足・膝
③ 骨盤・股関節・腰
④ 肩・腕・背骨
⑤ 頭・首(背骨)・顔(感覚器官)


以下、各回の詳しい内容です。

①呼吸・胸郭

 呼吸には、横隔膜のはたらきが重要です。横隔膜のしくみ、それに接する胸郭や背骨、内臓などのしくみや動き方を知り、それから実際の呼吸を感じる練習をします。深い呼吸であれば、その動きが胸郭からお腹、骨盤や足、肩から手まで、全身に広がっていきます。いつもとは違う目線で呼吸を見て、身体の感覚を観察していくことで、新たな呼吸に気付かれることと思います。全身でらくに呼吸する感じを体験して頂けるように、色々な問いかけ方をご紹介していきたいと思っています。


②足・膝

 足には内・外・横の3つのアーチがあり、それらのアーチが調和して機能するしくみになっています。解剖学的に足のしくみを理解し、アーチの位置を知り、それぞれが別々に働いていることを感じられるよう練習します。足の中には小さな骨がたくさんあり、様々な動きに対応できるようになっています。ほんの少しであっても新しい動きを感じたり、足の感覚が増えたりすると、身体全体のバランスが良くなります。

 また、膝関節は主に大腿骨(もも)と頚骨(すね)で構成されているので、足や股関節との関わりが深いところです。膝のしくみ、関節の位置などを知り、実際の身体の感覚で理解してみたいと思います。なんとなく感じている(イメージの)位置と実際の位置がズレでいる場合が多く、これは動き方に大きな影響を与えるものなのです。足・膝という身体の土台に近いところが変化すると、どんな感じで立ち、歩くようになるのか実際に感じて頂きたいと思います。


③骨盤・股関節・腰

 骨盤は、左右の寛骨(腸骨・坐骨・恥骨)・仙骨・尾骨と分かれていて、左右の寛骨と大腿骨は股関節を、仙骨と腰椎(背骨)は腰仙関節を構成し、上半身と下半身がつながっているところです。これらの位置関係や大まかな仕組みを解剖学的に知り、それぞれが別々に動くことを理解すること、それを身体で感じる練習をすることが、この回の内容です。  
 
股関節がらくに動く感覚を知ること、骨盤の中にも色々な動きがあるのを感じることで、腰・骨盤は固いものではなく、実はもっと自由に動くことができるものだと感じられるでしょうし、これまでとは違う新しい動きや機能にも気付かれるのではないかと思います。ほんの少しであったとしても、今までとは違った部分が動くことにより、大きな可能性が広がります。より液体的に、やわらかく骨盤が感じられるきっかけにして頂きたいと思っています。


④肩・肩甲骨・腕

 肩関節は肩甲骨と上腕骨から構成され、肩甲骨は鎖骨を介して胸郭につながっています。これらのしくみ・動きを知ることは、背中や肩をらくにする助けになるでしょう。特に肩甲骨はさまざまな部分とつながりがあるので、動き方を理解することには大きな意味があります。自由に動ける肩甲骨を感じてみたいと思います。
 
 前腕には2本、手首や手にも小さな骨がたくさんあり、それらを自由に伸びやかに使うことが大切になります。手や腕はいつも多くの仕事をしていますし、表現する部分でもあるため、緊張しやすいところだと言えるでしょう。前腕・手の状態は、肩や背中・呼吸などにも深く影響を与えるので、実際に腕をやわらかく感じたり、動かしたりする体験ができる時間を持ちたいと思います。


⑤頭・顔・首

 頭・顔には感覚器官がたくさんあります。目・耳・鼻・口のしくみを知り、それぞれの使い方(感じ方)がどのように身体に変化をもたらすのか、実際に感じていきます。目の使い方、聴き方などにも習慣(癖)があることに気付き、パターンから離れてみることによって、身体には新たな変化が生まれます。感覚器官のパターンの変化には、とても大きな影響力があります。
 
また、顎(あご)のしくみについても考えてみたいと思います。この部分もまた、頭や首をはじめ、全身に与える影響が大きい部分の1つです。やわらかい顎や口、のどのイメージが浮かぶように練習していきます。これら感覚器官の使い方と身体の状態とのつながりを感じ、新たな視点を持つことで、日常をらくにするコツをつかめるようになることを考えていきます。
 

 このシリーズを通して、身体の感覚が高まることにより、人が全体で一つとして機能していることや、身体がさまざまな関係性で成り立っていることを、より実感できるようになるのではないかと思います。身体とこころの関係に気付かれたり、身体(自分)に対する見方が変わり始めたりするかもしれません。新しい視点を持つきっかけとして、この機会が役立つことを願っています。

 

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